第二次世界大戦中、本土をナチス・ドイツに、アジアの植民地を日本に占領された、日本はナチスと結託した「敵」でしかなかったオランダの、極東国際軍事裁判(東京裁判)代表判事ベルト・レーリンクは、その東京裁判で、インド判事ラダビノド・パルらとともに、多数派による「有罪」判決に対抗し、独自意見を出した。
本著はレーリンクが約二年九カ月の東京滞在でつづった日記と、オランダに残していた妻などへの約七十通の書簡とで、その間にレーリンクに起きた変化を描き出している。
東京裁判からほぼ半世紀後、旧ユーゴスラビアやルワンダの人道犯罪を裁く戦犯法廷が設置され、オランダで国際刑事裁判所が発足したが、米国や露国はいまも国際刑事裁判所に参加していないそうである。「勝者」は常に裁く側にしかいないと著者は指摘している。
日記や書簡。残されなければ時の波に流されてしまうもの。残されれば後の時代の力となる。